企業活動において「人」は最大の資産ですが、健康起因の事故は企業経営に甚大なリスクをもたらします。この書類は、単に従業員の健康状態を知るためだけのものではなく、**「適切な人員配置」を行い、「労災事故を未然に防ぐ」**ための防波堤としての役割を果たします。

以下に、この書類の重要性、具体的な活用シーン、法的効力、およびプライバシー情報の取り扱いについて詳しく解説します。

1. なぜこの書類が必要なのか?(目的と法的背景)

企業には、労働契約法に基づき、従業員が生命・身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮する**「安全配慮義務」**が課せられています。

  • 適切な人員配置のために:
  • 持病や健康上の不安を事前に把握することで、「腰痛がある従業員には重量物運搬をさせない」「てんかん等の発作リスクがある従業員には高所作業や運転業務をさせない」といった、個々の健康状態に応じた適正な配置が可能になります。
  • 「知らなかった」では済まされない:
  • もし健康状態を確認せずに危険な業務に就かせ、発作や体調急変により事故が起きた場合、企業は「安全配慮義務違反」として多額の損害賠償責任を問われる可能性があります。この書類は、企業が安全義務を果たすための第一歩となります。

2. 対象となる従業員とタイミング

主に以下のタイミングや職種で取得することが推奨されます。

  1. 入社時(採用内定後):
  2. 全ての従業員が対象です。業務遂行に支障がないか、就業にあたって配慮すべき点がないかを確認します。
  3. 配置転換・異動時:
  4. 事務職から現場職へ移る場合など、業務の身体的負荷が大きく変わる際。
  5. 特定の業務従事者:
  • 車両の運転業務(トラック、バス、タクシー、営業車など)
  • 高所作業、建設現場での作業
  • 深夜労働を含む業務
  • 人命を預かる業務(医療、介護、警備など)

3. 申告させるべき主な内容

業務に関連する範囲で、正確な情報を申告してもらう必要があります。

  • 既往歴・現病歴: 過去にかかった大きな病気や、現在治療中の病気。
  • 服薬状況: 特に、抗アレルギー薬や精神安定剤など、副作用として「眠気」や「集中力低下」を引き起こす可能性のある薬剤の使用有無。
  • 自覚症状: めまい、失神、動悸、腰痛など、突発的な事故につながる症状の有無。
  • 業務遂行への影響: 医師から就業制限を受けている事項があるか。

4. 「誓約書」としての法的効力と虚偽申告のリスク

この書類の重要な点は、単なるアンケートではなく、内容が真実であることを誓う**「誓約書」**の性質を兼ねていることです。

  • 採用取り消し・解雇の根拠:
  • もし、業務に重大な支障をきたす持病(例:運転手のてんかん発作や重度の睡眠障害など)を意図的に隠して入社し、後にそれが発覚した場合、あるいはそれにより事故を起こした場合、企業は「経歴(健康状態)詐称」として採用の取り消し懲戒解雇を行う正当な根拠を得やすくなります。
  • 責任の所在の明確化:
  • 虚偽の申告によって発生した損害について、会社側が免責される、あるいは本人に損害賠償を請求する際の根拠資料となります。

5. プライバシーへの配慮(注意点)

健康情報は「機微な個人情報(センシティブ情報)」にあたるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

  • 業務関連性: 業務と全く関係のない病歴(感染経路を知る必要のない感染症や遺伝的疾患など)まで詳細に聞くことは、就職差別につながる恐れがあり、職業安定法などで制限されています。「業務遂行に支障があるか否か」という観点での質問項目に留めることが重要です。
  • 情報管理の徹底: 提出された書類は厳重に管理し、人事担当者や産業医など、必要最小限の人間のみが閲覧できるようにしなければなりません。

まとめ

「健康状態に関する申告書兼誓約書」は、従業員を監視するためではなく、**「従業員自身を守り、職場全体の安全を確保する」**ために提出してもらうものです。

本テンプレートは、業務遂行に必要な健康情報を過不足なく収集しつつ、虚偽申告に対するリスクヘッジも盛り込んだ内容となっています。労務トラブルを未然に防ぐため、入社手続き等のセットとして必ず活用しましょう。