スマートフォン、ノートパソコン、モバイルバッテリー、電動工具、ドローンなど、現代の電子機器に不可欠なリチウムイオン電池。
その高いエネルギー密度と利便性の一方で、内部短絡などによる発火や破裂のリスクもはらんでいます。
そのため、リチウムイオン電池およびそれを内蔵した製品の輸入・販売・輸送は、複数の法律や国際規則によって厳しく管理されています。
輸入事業者は、国内での販売に関する「電気用品安全法(PSEマーク)」と、国際輸送に関する「国連危険物輸送勧告(UN38.
3)」および「IATA危険物規則書」の双方を理解し、適切な証明書類を準備する必要があります。
国内販売のための規制:電気用品安全法とPSEマーク
2019年2月1日以降、日本国内で販売される多くのリチウムイオン電池は、「電気用品安全法」の規制対象となりました。
特に、体積エネルギー密度が400Wh/L以上のものが対象となり、これにはほとんどのスマートフォン用モバイルバッテリーが含まれます。
輸入事業者の義務:
- 事業の届出:経済産業省に「電気用品輸入事業届出」を行います。
- 技術基準適合確認: 輸入するリチウムイオン電池が、日本の技術基準(衝撃試験、圧壊試験、過充電試験など)に適合していることを確認します。この証明は、自主検査記録として保管します。
- PSEマークの表示: 上記の義務を履行した上で、製品に丸形のPSEマークと届出事業者名を表示します。
PSEマークのない対象製品を販売することは違法です。輸入通関時に、税関からPSEマークに関する手続きの履行状況について説明を求められることがあります。
国際輸送のための規制:UN38.3テストとIATA危険物規則書
リチウムイオン電池は、国連によって「危険物クラス9」に分類されており、その国際輸送(特に航空輸送)は極めて厳格に規制されています。これは、輸送中の振動や気圧の変化によって発火するリスクがあるためです。
UN38.3テストレポート:
リチウムイオン電池を航空・海上輸送するためには、その電池が「国連危険物輸送勧告 試験基準マニュアル」のセクション38.
3(通称UN38.
3)に定められた一連の安全性試験に合格していることが絶対条件です。
この試験には、高度シミュレーション、温度試験、振動、衝撃、外部短絡、圧壊などが含まれます。
輸入者は、海外の製造者または輸出者から、このUN38.
3テストに合格したことを証明する「テストレポート(またはテストサマリー)」を入手しなければなりません。
このレポートがなければ、航空会社や船会社は貨物の輸送を引き受けてくれません。
IATA危険物規則書と梱包・ラベル表示:
航空輸送の場合、さらに国際航空運送協会(IATA)が定める「危険物規則書(DGR)」に従う必要があります。
- 梱包: 電池は、短絡を防ぐための強固な国連規格容器に梱包する必要があります。
- ラベル表示: 梱包の外側には、リチウムイオン電池であることを示す「リチウムバッテリーラベル」や、「危険物ラベル(クラス9)」を貼り付けます。
- 危険物申告書(DGD): 輸出者は、貨物の詳細を記した「荷送人による危険物申告書(Shipper's Declaration for Dangerous Goods)」を作成し、航空会社に提出する必要があります。
輸入者は、輸出者がこれらのIATAの規則をすべて遵守して貨物を発送することを確認する責任があります。
書類の不備や不適切な梱包は、輸送の遅延や拒否に直結します。
リチウムイオン電池の輸入は、国内法(電安法)と国際輸送規則の両方をクリアする必要がある、高度なコンプライアンスが求められる分野です。