輸入許可が下り、貨物を無事に引き取った後も、輸入者の責任は終わりではありません。
日本の税関は、貿易の円滑化を促進するため、水際での検査を必要最小限にとどめる一方、輸入許可後、数年経ってから輸入者の事業所などを訪問し、過去の輸入取引が適正に行われていたかを詳細に調査する「事後調査」制度を導入しています。
この調査で申告内容の誤りや法令違反が発覚した場合、追徴課税や重い加算税が課される可能性があります。
したがって、輸入者は、日頃から関連書類を適切に保管し、調査に備えておくことがコンプライアンス経営の観点から極めて重要です。
本稿では、税関の事後調査の目的、対象となる書類、そして調査に臨む際の対応ポイントについて解説します。
事後調査の目的と調査内容
事後調査の主な目的は、輸入者が行った自己申告の内容が、関税関係法令に照らして正しかったかどうかを事後的に検証することです。
これにより、適正かつ公平な関税等の徴収を確保すると同時に、法令遵守意識の向上を促します。
調査で重点的にチェックされる項目:
- 関税評価の妥当性: 課税価格が適正に計算されているか。特に、インボイス価格に加算すべき費用(ロイヤルティ、無償提供した金型の費用、運賃など)が漏れなく申告されているかは、最も厳しくチェックされるポイントです。
- 関税分類(HSコード)の正確性: 適用されたHSコードが正しく、それに対応する関税率が適正であったか。
- 原産地の正当性: EPA/TPPなどの特恵関税の適用を受けている場合、その根拠となる原産地証明書が有効であり、産品が実際に原産地規則を満たしているか。
- 減免税制度の適正利用: 特定の用途に供することを条件に関税の減免を受けている場合、その用途外に転用されていないか。
調査対象となる書類と保管義務
関税法では、輸入者に対し、輸入取引に関する帳簿や書類を、輸入許可の日から原則として5年間(特例申告の場合は7年間)保存することを義務付けています。事後調査では、これらの書類の提出を求められます。
保管が必要な主要書類リスト:
- 取引関連書類: 売買契約書、発注書、価格交渉のメール、インボイス、パッキングリストなど。
- 運送・保険関連書類: 船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB)、運賃明細書、保険証券など。
- 決済関連書類: 銀行が発行した送金依頼書の控え、決済計算書など。
- 輸入申告関連書類: 輸入許可通知書、輸入(納税)申告書の控え、その他申告の根拠となった資料(商品説明書、成分表など)。
- 会計帳簿: 総勘定元帳、買掛金元帳など、当該輸入取引が会計上どのように処理されたかを示す帳簿。
- 価格に影響を与える契約書: ライセンス契約書、代理店契約書、金型の提供に関する契約書など、加算要素に関わるすべての契約書類。
事後調査への対応ポイント
ある日、税関から事後調査の事前通知が来たら、慌てずに対応することが重要です。通常、調査の1~2週間前に電話などで通知があります。
- 窓口担当者の決定: 経理部門や貿易部門の責任者を調査対応の窓口として明確にします。
- 事前準備: 税関が関心を持っていると思われる取引について、関連書類を整理し、取引の経緯や価格決定の根拠などを説明できるように準備します。通関を依頼した通関業者に相談し、助言を求めるのも有効です。
- 誠実な対応: 調査当日は、税関職員の質問に対して、把握している事実を誠実に説明します。不明な点については、憶測で答えず、後日確認して回答する旨を伝えます。
- 指摘事項への対応: 調査の結果、申告漏れなどの誤りが指摘された場合は、速やかに修正申告を行い、不足分の税額と延滞税、場合によっては過少申告加算税を納付します。意図的な隠蔽などがなければ、重加算税などの重いペナルティは避けられる場合が多いです。
事後調査は、自社の貿易管理体制を見直す良い機会でもあります。
日頃からの適正な書類保管とコンプライアンス意識が、企業を不要なリスクから守ります。
調査手続きの詳細は、
customs.
go.
jp/zeikan/jigo.
htm" target="_blank" rel="noopener noreferrer">税関の事後調査に関するページで確認できます。