「この新しい商品の関税率は何パーセントだろうか?」「海外の関連会社から部品を輸入するが、価格設定は関税評価上、問題ないだろうか?」「この製品は、日EU・EPAの原産地規則を満たしているだろうか?」――。輸入ビジネスにおいては、このような専門的で判断に迷う疑問がしばしば生じます。これらの疑問を輸入申告の段階まで放置しておくと、税関との見解の相違から予期せぬ高額な関税が発生したり、手続きが大幅に遅延したりするリスクがあります。こうした不確実性を排除し、ビジネスの予測可能性を高めるために、日本の税関が設けている非常に有用な制度が「事前教示制度」です。
事前教示制度とは?
事前教示制度とは、輸入者が、輸入を予定している貨物について、輸入申告前に、税関に対して書面で照会を行い、その貨物の①関税分類(HSコード)、②原産地、③関税評価に関する見解を文書で回答してもらえる制度です。この文書による回答は「事前教示回答書」と呼ばれ、これに基づいて輸入申告が行われた場合、税関は、法律や事実関係に変更がない限り、その回答に拘束されます。つまり、輸入者にとっては、申告前に税関の公式な見解を得ることで、安心して輸入手続きを進めることができる、極めて強力なツールなのです。
事前教示制度を利用するメリット:
- 予測可能性の向上: 事前に関税率や課税価格が確定するため、正確なコスト計算が可能になり、事業計画が立てやすくなります。
- 通関の迅速化: 申告時に事前教示回答書を添付することで、税関での審査がスムーズに進み、貨物の迅速な引取りに繋がります。
- コンプライアンスの確保: 税関の公式な見解を得ることで、適正な申告を確保し、後の事後調査などで指摘を受けるリスクを低減できます。
- トラブルの未然防止: 複雑な取引条件や新規性の高い商品について、事前に税関との認識を合わせておくことで、解釈の違いによるトラブルを防ぎます。
事前教示の申請手続きと必要書類
事前教示の照会は、原則として文書(郵送または窓口持参)で行います。照会先は、輸入を予定している港や空港を管轄する税関の関税鑑査官部門です。
申請に必要な主な書類:
- 事前教示に関する照会書(様式C-1000): 税関のウェブサイトからダウンロードできます。照会者の情報、貨物の詳細、そして「照会者の見解及びその理由」を具体的に記載します。なぜそのHSコードが妥当だと考えるのか、なぜその価格設定が関税評価上正しいと考えるのか、といった自社の見解を論理的に説明することが重要です。
- 照会内容に応じた添付資料: これが回答の質を左右します。
- 関税分類(HSコード)の場合: 商品のカタログ、仕様書、設計図、成分表、製造工程図、サンプル写真など、その物品が「何であるか」を客観的かつ詳細に説明できるすべての資料。
- 関税評価の場合: 売買契約書、インボイス(案)、ロイヤルティ契約書、価格決定に関する社内文書など、価格の構成要素や取引の実態を示す資料。
- 原産地の場合: 製造工程明細書、部品表、材料の原産地証明書など、その産品が協定の原産地規則を満たしていることを証明する資料。
税関は提出された資料に基づき審査を行い、原則として30日以内に文書で回答します。ただし、内容が複雑な場合はさらに時間を要することもあります。回答の有効期間は、通常3年間です。この制度は無料で利用できるため、少しでも判断に迷う点があれば、積極的に活用することが推奨されます。制度の詳細や様式のダウンロードは、税関の事前教示制度に関するページで確認できます。