自社ブランドの製品を開発・販売する事業者にとって、模倣品(偽ブランド品)の流通は、売上の損失だけでなく、長年かけて築き上げたブランドイメージを著しく毀損する深刻な問題です。

特に海外で製造された模倣品が日本に流入するのを防ぐためには、水際、つまり税関での取締りが極めて重要になります。

日本の税関では、知的財産権(商標権、著作権、特許権など)を侵害する物品の輸入を差し止める制度が設けられており、権利者は「輸入差止申立制度」を積極的に活用することで、自社の権利を効果的に保護することができます。

輸入差止申立制度とは?

輸入差止申立制度とは、知的財産権を有する権利者(またはその代理人)が、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとしている場合に、その事実を税関に申し立て、当該貨物の差止めを求めることができる制度です。

この申立てが税関に受理されると、税関は全国の税関官署に対し、申立ての対象となる侵害物品に関する情報を共有し、輸入通関時の監視を強化します。

これにより、権利者が個々の侵害品を発見して警告するよりも、はるかに効率的かつ網羅的に模倣品の流入を阻止することが可能になります。

申立てのメリット:

  • 全国の税関での監視強化: 一度の申立てで、日本のすべての港や空港で監視が行われます。
  • 税関の専門知識の活用: 税関職員は、日々多種多様な貨物を検査しており、侵害品を発見する専門的な知見と経験を持っています。
  • コスト効率: 権利者が自ら市場で模倣品を買い集めて法的措置を講じるよりも、水際で差し止める方がコストを大幅に抑えられます。
  • 抑止効果: 申立てが受理され、差止め実績が公表されることで、模倣品を取り扱おうとする悪質な輸入業者に対する強い抑止力となります。

輸入差止申立ての手続きと必要書類

申立ては、日本のいずれかの税関(通常は東京税関や大阪税関などの主要税関)の知的財産調査官に対して行います。手続きは専門性を要するため、弁護士や弁理士などの専門家と相談しながら進めるのが一般的です。

申立てに必要な主な書類:

  1. 輸入差止申立書: 税関の定める様式に従って作成します。申立人(権利者)、権利の内容、侵害の事実、差止めを求める貨物などの情報を詳細に記載します。
  2. 権利を証明する書類:
    • 商標権の場合: 商標登録原簿の謄本など。
    • 著作権の場合: 著作権の登録証明書、または著作物が創作されたことや公表時期を証明できる資料。
    • 特許権・意匠権などの場合: 特許登録原簿の謄本など。
  3. 侵害の事実を疎明する資料: これが最も重要な部分です。
    • 真正品と侵害品の比較写真・サンプル: ロゴの違い、縫製の質、タグの表記など、両者を並べてどこが違うのかを具体的に示す資料。
    • 侵害品(模倣品)の入手経緯: 実際に市場で入手した侵害品の購入記録や、侵害品を販売している海外のウェブサイトの情報など。
    • 侵害すると認める理由: なぜその貨物が自社の権利を侵害すると判断するのか、法的な根拠と共に具体的に説明します。
  4. 差止め期間中の担保: 万が一、申立てに基づいて貨物を差し止めた結果、それが侵害品ではなかった場合に輸入者が被る損害を賠償するため、担保の提供を求められる場合があります。ただし、多くの場合、宣誓書や資力を証明する書類の提出で免除されます。

申立てが受理されると、有効期間(通常2年間、更新可能)が設定され、その間、税関は監視を続けます。

侵害疑義品が発見されると、税関は申立人と輸入者の双方に通知し、認定手続(侵害品か否かを判断する手続き)を開始します。

この制度を有効に活用することは、自社のブランド価値を守るための強力な武器となります。

制度の詳細や申立書の様式については、

customs.

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jp/mizugiwa/chiteki/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">税関の知的財産権侵害物品の取締りに関するウェブページで確認することができます。