輸入申告書と関連書類を税関に提出した後、すべての貨物が自動的に許可されるわけではありません。税関は、提出された申告内容の真実性を確認し、日本の安全と経済を守るため、リスク分析に基づいて貨物の検査を行います。この「税関検査」は、輸入者にとって時間とコストに影響を与える可能性がある重要なプロセスです。検査対象に選ばれた場合、その指示に従い、迅速かつ誠実に対応することが、輸入許可への最終関門をスムーズに通過する鍵となります。本稿では、日本の税関で行われる主な検査の種類と、検査に備えるための準備について解説します。

税関のリスク分析と検査区分の決定

年間数千万件に及ぶ輸入申告を効率的に処理するため、税関は「リスク管理手法」を導入しています。過去のデータや貨物の種類、輸出入者の情報、国際情勢などを基に、申告された貨物をリスクレベルに応じて3つの区分に分類します。

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  1. 区分1(簡易審査扱い): 最もリスクが低いと判断された貨物です。申告内容に異常がなければ、システムによる自動チェックのみで即座に輸入許可となります。
  2. 区分2(書類審査扱い): 申告書類の内容を確認する必要があると判断された貨物です。税関職員がインボイスや船荷証券などの書類を審査し、申告内容の妥当性(品目分類、価格など)を確認します。疑問点があれば、通関業者を通じて輸入者に質問がなされます。
  3. 区分3(検査扱い): 最もリスクが高い、または確認が必要と判断された貨物です。書類審査に加えて、保税地域で実際に貨物の中身を確認する「現物検査」が行われます。

主な税関検査の種類と内容

区分3に分類された場合、以下のような様々な検査が指示される可能性があります。

  • 見本(けんぽん)検査: 税関職員が、貨物の一部(例:1カートンのうち数点)をサンプルとして抜き取り、税関の検査場に持ち帰って詳細に確認する検査です。品目分類(HSコード)が正しいか、申告内容と現物が一致しているかなどを判断します。
  • 一部開被(かいひ)検査: 保税地域の現場で、税関職員の立ち会いの下、梱包の一部を開封して中身を確認する検査です。数量や品名、虚偽申告の有無などをチェックします。
  • 全部開被検査: 非常に稀ですが、不正薬物や知的財産侵害物品の疑いが強い場合など、重大な違反が疑われるケースで行われます。すべての梱包を開封し、内容物を詳細に検査します。
  • 分析検査: 成分や材質を科学的に分析しないと品目分類や法令該当性が判断できない場合に行われます。税関の分析センターにサンプルが送られ、分析結果が出るまで輸入許可は保留されます。化学製品や食品添加物などで実施されることがあります。

検査にスムーズに対応するためのポイント

税関検査は、輸入者側がコントロールできるものではありませんが、事前の準備と誠実な対応で、その影響を最小限に抑えることは可能です。

  • 正確な書類作成: 最も重要な対策です。インボイスやパッキングリストに、品名を具体的かつ詳細に記載し、現物と完全に一致させておくことが、不要な疑念を招かないための基本です。曖昧な記載は検査のトリガーになり得ます。
  • 商品説明資料の準備: 特に新規の製品や複雑な製品を輸入する場合、商品のカタログ、仕様書、成分表、製造工程図など、その製品が「何であるか」を客観的に説明できる資料を事前に通関業者に提供しておきましょう。税関からの質問に迅速に回答でき、スムーズな審査に繋がります。
  • 通関業者との緊密な連携: 検査の指示が出た場合、通関業者が税関との間の主要な連絡窓口となります。検査のスケジュール調整や税関職員への説明など、経験豊富な通関業者のサポートが不可欠です。
  • コンプライアンスの遵守: 日頃から法令を遵守し、誠実な申告を続けることで、税関からの信頼度が向上し、長期的には検査率が低下する可能性があります。
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税関検査は、日本の安全な社会を守るための重要な水際対策です。その趣旨を理解し、協力的な姿勢で臨むことが、結果的に自社のビジネスを円滑に進めることに繋がります。検査に関する公式な情報は、税関のウェブサイトで確認できます。