海外から魅力的な食品や飲料を日本市場に導入することは、多くの事業者にとって大きなビジネスチャンスです。
しかし、食品の輸入は、国民の健康と安全に直結するため、他の工業製品とは比較にならないほど厳格な規制下に置かれています。
その中心となるのが、食品衛生法に基づく「食品等輸入届出」制度です。
販売または営業目的で食品等を輸入する場合、すべての輸入者は、税関への輸入申告に先立って、厚生労働省の検疫所にこの届出を行う義務があります。
食品等輸入届出制度の目的と対象品目
この制度の唯一の目的は、輸入される食品等の安全性を確保し、飲食に起因する衛生上の危害の発生を未然に防ぐことです。
そのため、検疫所の食品衛生監視員が、輸入される品物が日本の食品衛生法の基準に適合しているかを、書類審査や検査を通じて厳しくチェックします。
届出が必要な対象品目:
- 食品: 野菜、果物、食肉、魚介類、菓子、飲料など、人が飲食するすべてのもの。
- 食品添加物: 保存料、着色料、甘味料など。
- 器具・容器包装: 皿、コップ、弁当箱、食品用ラップなど、食品に直接触れるもの。
- 乳幼児用おもちゃ: 乳幼児が口に入れる可能性があるため、特定のおもちゃも対象となります。
個人消費目的の少量輸入や、試験研究用サンプルなど、営業目的でない場合は届出が免除されることもありますが、その判断は慎重に行う必要があります。
「食品等輸入届出書」の作成と届出プロセス
届出は、貨物が到着する港や空港を管轄する検疫所の食品監視課に対して行います。
現在では、紙による届出のほか、オンラインシステム(FAINS: 輸入食品監視支援システム)を利用した電子届出が主流となっています。
届出書に記載する主な情報:
- 輸入者情報: 氏名、住所、連絡先など。
- 貨物情報: 品名、数量、重量、積込港、製造者名、輸出者名など。
- 製品情報(特に重要):
- 原材料: 使用されているすべての原材料のリスト。
- 添加物: 日本で使用が認められていない添加物が含まれていないか。
- 製造・加工方法: 加熱殺菌の有無や方法など、製品の安全性を担保する工程。
これらの情報を証明するため、製造者から発行された「原材料及び製造工程に関する説明書」や、必要に応じて「衛生証明書」「試験成績書」などの添付が求められます。
検疫所による審査と検査
届出書が提出されると、食品衛生監視員が以下の基準で審査を行います。
- 日本の製造基準や成分規格に適合しているか。
- 使用されている添加物が、日本の使用基準を満たしているか。
- 過去に衛生上の問題があった製造者や輸出国からのものではないか。
- 農薬の残留基準や、有害物質(カビ毒、重金属など)の基準値を超えていないか。
審査の結果、検査が必要と判断された場合(モニタリング検査、命令検査など)、貨物は検査結果が出るまで保税地域から動かすことはできません。
検査で問題がなければ「食品等輸入届出済証」が交付され、この済証を税関に提出して初めて輸入許可が下ります。
もし法違反が認められた場合は、その貨物は積戻し(返送)または廃棄処分となります。
食品輸入を計画する際は、事前に厚生労働省のウェブサイトや最寄りの検疫所で、対象品目の規制内容や必要書類を十分に確認することが成功の鍵です。