海外のオークションで落札した絵画、アンティークフェアで見つけた美しい家具、あるいは歴史的価値のある陶磁器。
美術品や骨董品の輸入は、コレクターやギャラリーにとって魅力的な活動ですが、その通関手続きは一般的な工業製品とは異なる特有の難しさを伴います。
主な課題は、一点物が多く客観的な「市場価格」が存在しないこれらの品物の「関税評価(課税価格の決定)」と、輸入しようとする品物が相手国または日本の「文化財」に該当しないかどうかの確認です。
適切な書類と知識がなければ、予期せぬ関税が発生したり、最悪の場合、輸入が差し止められたりする可能性があります。
関税評価の課題:課税価格をどう証明するか?
関税は、原則として輸入品のCIF価格(商品代金+運賃+保険料)に対して課せられます。
しかし、美術品や骨董品は価格の客観性が乏しいため、税関は申告された価格が適正であるかを慎重に審査します。
特に、個人間の取引や、申告価格が著しく低い場合は、その根拠を証明する書類が重要になります。
課税価格を裏付けるための必要書類:
- 売買契約書・インボイス: オークションハウスからの落札証明書や、ギャラリーが発行したインボイスなど、第三者が発行した価格証明が最も信頼性の高い書類です。
- 送金証明書: 実際にその金額を支払ったことを示す、銀行の海外送金依頼書の控えなど。
- 作品の来歴書(プロヴェナンス): その作品が過去にどのような価格で取引されてきたかを示す記録や、作家の評価、展覧会の出品歴などが記された書類。価格の妥当性を補強する材料となります。
- 専門家による鑑定書・評価書: 第三者の美術品鑑定家や専門機関が作成した評価額を示す書類。
税関はこれらの書類を総合的に判断し、申告価格が不当に低いと判断した場合は、類似の作品の取引事例などを参考に、課税価格を更正(引き上げ)することがあります。
関税の免除:「こっとう品」の定義
日本の関税定率法では、「製作後100年を超えたこっとう品」については、原則として関税が無税(0%)と定められています。
この免税措置の適用を受けるためには、輸入者はその品物が「製作後100年以上経過している」ことを証明する責任があります。
100年超を証明するための書類:
- 製作年代が記された公式な文献やカタログレゾネの写し。
- 作者の生没年がわかる資料。
- 放射性炭素年代測定などの科学的分析結果。
- 信頼できる専門家や機関が発行した、製作年代に関する鑑定書。
これらの証明ができない場合、たとえ見た目が古くても「こっとう品」とは認められず、その品物の材質に応じた関税率(例:陶磁器製品、木製家具など)が課されることになります。
文化財保護法に関する注意点
美術品・骨董品の輸入では、相手国の文化財保護法にも注意が必要です。
多くの国では、自国の重要な文化財の国外流出を法律で厳しく制限しています。
輸入しようとする品物が、その国の法律で「文化財」に指定されている場合、輸出国の政府機関が発行した「輸出許可書」がなければ、そもそも日本に持ち出すことができません。
この許可書がない品物を不正に持ち出す行為は、文化財の密輸という国際的な犯罪にあたります。
輸入者は、購入前に必ずその品物が輸出規制の対象でないか、セラーやオークションハウスに確認する義務があります。
日本の文化財保護に関する情報は
bunka.
go.
jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">文化庁、関税に関する詳細は
customs.
go.
jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">税関のウェブサイトで確認できます。