ヘアスプレー、殺虫剤、卓上コンロ用のカセットボンベ、使い捨てライター、消火器――。これらは日常的に目にする製品ですが、共通して「高圧ガス」が使用されています。高圧ガスは、取り扱いを誤ると破裂や火災などの重大な事故を引き起こす可能性があるため、その製造、貯蔵、販売、そして輸入は「高圧ガス保安法」という法律によって厳しく規制されています。海外からこれらの製品を輸入する事業者は、税関手続きとは別に、この法律に基づいた容器検査や輸入承認の手続きをクリアしなければ、国内での販売は認められません。

高圧ガス保安法による輸入規制の目的

高圧ガス保安法の目的は、高圧ガスによる災害を防止し、公共の安全を確保することです。輸入においては、特に以下の2点が重要視されます。

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  1. 容器の安全性: ガスを充塡する容器(スプレー缶やボンベなど)が、日本の技術基準で定められた強度や耐久性を満たしているか。海外の安全基準で製造された容器が、必ずしも日本の基準に適合するとは限りません。
  2. ガスの種類と表示: 充塡されているガスの種類(可燃性、毒性、不燃性など)が明確にされ、法律で定められた表示が正しく行われているか。

これらの確認を怠り、安全でない製品が市場に流通することを防ぐため、輸入時に厳格なチェックが行われます。

輸入時に必要な手続きと証明書類

輸入する高圧ガス製品の種類や容器の形態によって、手続きは異なりますが、大きく分けて「容器検査」と「輸入検査」の二つのステップがあります。

1. 容器検査

日本国内で製造された容器には、検査合格を示す「刻印」が表示されています。しかし、海外で製造された容器にはこの刻印がありません。そのため、輸入する容器が日本の技術基準に適合していることを証明する必要があります。方法は主に2つあります。

  • 海外製造者の登録を受ける方法: 海外の容器製造者が、事前に日本の経済産業大臣の登録を受けることで、その工場で製造された容器は日本の基準に適合していると見なされ、個別の容器検査が簡略化されます。
  • 個別の輸入容器検査を受ける方法: 上記の登録がない製造者の容器を輸入する場合、輸入者(または製造者)は、経済産業省が指定した「登録容器検査機関」に申請し、輸入する容器のロットごとに、強度試験などの検査を受け、合格する必要があります。

この容器検査に合格した証明書は、後の輸入手続きで必須となります。

2. 輸入検査(高圧ガス輸入検査申請)

容器検査とは別に、輸入する高圧ガスそのものについて、経済産業大臣(窓口は各地域の産業保安監督部)に「高圧ガス輸入検査申請書」を提出し、検査を受ける必要があります。ただし、特定の条件を満たす場合は、この検査が免除されることがあります。

免除の対象となる主なケース(輸入承認への切り替え):

例えば、化粧品や医薬部外品のスプレー缶(エアゾール製品)など、内容積が1リットル以下の容器に充塡されたもので、特定のガス(不活性ガスや一部の可燃性ガス)が使用されている場合、個別の輸入検査の代わりに、「高圧ガス輸入承認」を受けることで手続きを簡略化できます。この場合、以下の書類を産業保安監督部に提出します。

  • 高圧ガス輸入承認申請書: 定められた様式で作成します。
  • 容器検査合格の証明書: 上記1で取得した書類。
  • 成分表・仕様書: 充塡されているガスの種類や圧力が分かる書類。
  • その他: 製品のカタログやラベルなど。
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承認が得られると「高圧ガス輸入承認書」が発行され、これを通関時に税関に提示します。税関は、この承認書を確認して初めて輸入を許可します。高圧ガス保安法の手続きは非常に専門的で、違反した場合の社会的影響も大きいため、必ず事前に経済産業省のウェブサイトや産業保安監督部に相談し、正しい手順を確認することが不可欠です。